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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)232号 判決 1985年10月31日

原告

蒔田義夫

被告

特許庁長官

上記当事者間の昭和57年(行ケ)第232号審決(実用新案登録願拒絶査定不服審判の審決)取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第1当事者が求めた裁判

原告は、「特許庁が昭和56年審判第17287号事件について、昭和57年9月1日にした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。

第2請求の原因

原告は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和50年4月7日、名称を「高圧ボンベで直接供給される、液化石油ガス類による原因不明の爆発の解明と、それに対応する防災システム」とする発明について、特許出願(特許願昭和50年第41255号)をし、昭和53年9月8日、実用新案法第8条1項の規定により、右特許出願を考案の名称を前同様(後に「高圧ボンベで直接供給される、液化石油ガス類による原因不明の爆発の解明と、それに対応する液化石油ガス供給装置」と訂正)とする実用新案登録出願に変更した(以下「本願考案」という。)ところ、昭和56年6月25日拒絶査定を受けたので、同年8月24日、これに対する審判を請求し、特許庁昭和56年審判第17287号事件として審理されたが、昭和57年9月1日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年10月23日原告に送達された。

2  本願考案の要旨

低圧の出口側に、安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓などが設けられているガス供給装置の調整器と栓類との間に自動遮断装置を設けた液化石油ガス供給装置。

3  本件審決理由の要点

本願考案の要旨は、前項記載のとおりと認められるところ、本願考案の実用新案登録出願の日前の出願であつて、本願考案の実用新案登録出願後に出願公告された実用新案登録願昭和50年第16446号(以下「先願」という。)の願書に最初に添附された明細書の考案の詳細な説明の項には、次の事項が記載されている。

1 「本考案は、プロパンガス等の高圧ガス使用時の安全装置に関するもので、更に詳しくは、ガスの使用機器あるいはゴムホースなどにその耐圧力をこえる圧力がかからないように、ガスの送給管系に異常圧力が発生したときにゴムホース等の装置位置より上流側でガスを閉止してガス送給管系の安全を保つ出流れ閉止弁を提供する。」

2 「高圧ガスはボンベに圧縮あるいは圧縮液化されて充填されているものであり、使用に際しては減圧弁等により目的の使用圧力に減圧調整して、これをゴムホース等を介して使用機器に導き消費するものである。」

3 「出流れとは、減圧弁の弁と弁座の密着が完全でなく、ガスを完全に閉塞すべきときに、その役を果さず、弁と弁座が単なるオリフイスとなり高圧のガスが2次側へ流れ出す現象をいう。」

4  「本考案は、ゴムホース、使用機器などのように耐圧的に弱い部分に高圧がかからないように減圧弁とゴムホースの間に取り付けて、圧力の異常上昇を感知してガスの流れを閉塞し、安全を保つ閉止弁を提供する。」

また、同願書添附図面の第3図には、出流れ閉止弁の使用態様が図示されている。

これからの記載を総合的に勘案すると、先願の実用新案登録出願当初の明細書及び図面には、出流れ閉止弁を使用するガス供給装置として、「高圧ガスを圧縮あるいは圧縮液化して充填しているボンベ、使用圧力にガスを減圧調整する減圧弁等、ゴムホース及びガス使用機器とからなる液化ガス供給装置において、減圧弁等とガスの使用機器との間のガス導管にガス圧力の異常上昇を感知してガス導管中のガスの流れを閉塞する自動遮断弁を設けた装置」の考案(以下「引用考案」という。)が開示されているものと認められる。

そこで、本願考案と引用考案とを比較すると、両者は、液化ガス供給装置において、ガスボンベとガス使用機器との間のガス導管中を流れるガスの圧力の異常上昇を感知して、その流れを閉塞するガス流自動遮断装置をガス導管に設ける点においては同一であると認められるが、ガス導管に取り付けたガス流自動遮断装置の前後の機器が、前者では「安全弁を備えた調整器と安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓などとの間」であるのに対し、後者では「減圧弁等とガス使用機器の間」である点で一応の相違がみられる。

ところで、ガスの使用機器にはガス栓、元栓、器具栓などが付属していることは普通のことであるから、後者の「使用機器」という表現は当然にこれらの栓類が付属している機器類を意味しているものと考えられるし、また、「減圧弁等」はガス圧の調整を行う目的のものであり、このような機能をもつものであれば、いかなる機器でもよいと考えられるので、前者における「安全弁を備えた調整器」もこの「減圧弁等」に含まれる一機器にすぎないと判断されるので、ガス自動遮断装置の前後に設ける機器類については両者間に格別の相違があるものとは認められない。

したがつて、残された相違点は、本願考案はガス栓、元栓、器具栓などを「安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準に製造された」ものに限定しているのに対し、引用考案にはこのような限定がない点であるが、本願考案明細書中の説明によれば、このような限定条件に該当するガス供給装置の栓類は本願考案の実用新案登録出願前より一部に使用されているものであつて、本願考案の実用新案登録出願日と2月程の違いしかない先願の実用新案登録出願の日である昭和50年2月6日以前においても同様にガス使用機器に使用されていたものであると認められるから、引用考案の「使用機器」という表現には、本願考案で限定されているような栓類を有するものも含まれるものと認められる。

したがつて、ガス供給装置の欠陥問題の認識の有無にかかわらず、ガス漏洩事故の防止という課題を解決するための構成及び効果において、本願考案は、引用考案と同一であると認めざるをえない。しかも、本願の考案者、実用新案登録出願時の出願人が、先願の考案者、出願人と同一でないことは明らかである。

したがつて、本願考案は、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない。

4  本件審決を取り消すべき事由

本件審決は、次に述べる理由により、違法として取り消されるべきである。

1 引用考案は、本願考案を拒絶する先願たりえないものである。すなわち、引用考案が記載されている先願の実用新案登録出願の日前の昭和49年8月20日に原告出願に係る特許願昭和49年第94621号があるところ、右特許願の明細書には、既に引用考案と同一の事項が記載されているので、引用考案は新規な技術事項といえないものであり、このような引用考案は、本願考案に対してそれを拒絶しうる先願たりえないものである。したがつて、引用考案により本願考案を拒絶した本件審決は、違法である。

2 引用考案には、液化石油ガス供給装置の欠陥問題に対する認識がなく、このような引用考案は、本願考案とは、その解決課題を異にするものであつて、同一とはいえない。すなわち、プロパンガス漏洩による事故は、低圧の出口側の各種ガス器具の気密検定基準が安全弁の作動ガス圧より低いという基本的な欠陥によるものであるところ、本願考案は、その登録請求の範囲にも、「安全弁の作動するガス圧より低い気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓などが設けられているガス供給装置」を本願考案の中心的構成要件として明記し、液化石油ガス供給装置の前記の欠陥問題を認識したうえ、従来の液化石油ガス供給装置の欠陥を解消することを目的としたものである。これに対し、引用考案は、弱いガス圧でも容易に作動する自動遮断装置を得ることが目的であつて、引用考案を記載した先願の明細書及び図面を検討しても、その実用新案登録請求の範囲は、本願考案とは構成を異にするのみならず、そこには、前記のような液化石油ガス供給装置の欠陥問題についての記述は、全く認められない。従来のガス供給装置に設備されいる安全弁は、ガス事故に対する安全対策上最も重要な部分であり、本願考案が解決しようとする課題の欠陥問題の中心であるが、引用考案は、安全弁のないものであり、また、ガス栓の気密検定基準も安全弁と同様に欠陥問題の中心であるところ、引用考案は、この点についても記載するところがない。

更に、両考案の作用効果についても、本願考案では、調整器弁から高圧ガスが低圧側に漏洩しても、限定量以上のガスは安全弁から大気中に放散されるため、低圧側のガス圧が安全弁の作動ガス圧より高くなることはないので、ガス供給装置が破損することはなく、また、手動の高圧ガス抜き弁も必要とせず、従来のガス供給装置をそのまま使用することができるほか、取扱いも従来どおり簡単で、極めて安価な費用で済むという作用効果があるのに対し、引用考案では右のような作用効果を奏することができない。

したがつて、液化石油ガス供給装置の上記欠陥問題に対する認識等を欠く引用考案は、本願考案と同一のものとみることはできない。本件審決は、この点の認定判断を誤つたものである。

第3被告の答弁

被告指定代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。

1  請求の原因1ないし3の事実は、認める。

2  同4の主張は争う。本件審決の認定判断は正当であり、原告主張のような違法の点はない。

1 引用考案の記載されている先願の実用新案登録出願の日前に特許願昭和49年第94621号があることは認めるが、その特許出願の存在のゆえに引用考案の記載されている先願の実用新案登録出願が実用新案法第3条の2に規定する「他の実用新案登録出願」に該当しなくなることはない。したがつて、引用考案が本願考案に対する先願として成立しないという原告の主張は、失当である。

2 引用考案の記載された先願の明細書にガス供給装置の欠陥問題についての記載がないことは、原告主張のとおりであるが、本願考案における調整器、自動遮断装置、栓類が、引用考案の減圧弁等、出流れ閉止弁、使用機器等にそれぞれ相当し、これらの機器等を組み合わせた配置関係は、両者において相違はない。ただ、本願考案では、栓類を「安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓など」に限定しているのに対し、引用考案には、このような限定はないが、本願考案の構成は、引用考案の構成中に表現されているに等しいから、両者は同一とみるべきである。

原告は、引用考案には安全弁が付いていない旨主張する。たしかに、引用考案には「安全弁」という用語は用いられていないが、引用考案は減圧弁を備えたものであり、「減圧弁」は一般に「圧力調整弁」などといわれるもので、この「減圧弁」には安全弁の機能を備えた「リリーフタイプ」といわれるものがあることは、当業者間における技術常識である。したがつて、引用考案中の「減圧弁」は「安全弁を備えた調整器」を含む概念であり、原告の前記主張は失当である。

また、原告は、引用考案は、液化石油ガス供給装置の欠陥問題に対する認識がなく、引用考案においてはガス栓の気密検定基準は考慮されていない旨主張する。引用考案中の使用機器に付属する栓類がいかなる気密検定基準を基に製造されたものかについては特に明記されていないが、特別の構造のものとは考えられないので、一般的な市販品、かなわち先願の実用新案登録出願当時(昭和50年2月)又はそれ以前に施行されていた気密検定基準に基づいて製造されたものと解するのが相当である。ところで、その当時あるいはそれ以前の気密検定基準は、本願考案の明細書中に述べられている「旧気密検定基準」であるから、引用考案中のガス栓が「旧気密検定基準」に基づいて製造されたものであることは、そこに記載されているに等しい自明の事項である。

一方、本願考案の実用新案登録請求の範囲中の「安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準」とは、主として旧気密検定基準のことと解される。

したがつて、引用考案中の使用機器に付属するガス栓類と本願考案中のガス栓とは、格別の相違がないものであり、原告の前記主張は、結局において失当である。

第4証拠関係

本件記録中の該当欄記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

(争いのない事実)

1  本件に関する特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

2 本件審決の認定判断は、次に説示するとおり正当であり、原告の主張はすべて理由がないものというべきである。

1  原告は、引用考案の記載されている先願の実用新案登録出願の日前の出願に係る特許願昭和49年第94621号の明細書には、既に引用考案と同一の事項が記載されているので、引用考案は新規ではなく、このような引用考案は、本願考案に対してこれを拒絶しうる先願たりえない旨主張する。しかし、前示のとおり、本件審決は、実用新案法第3条の2の規定により、本願考案は登録を受けることができないとしたものであるところ、同条は、実用新案登録出願に係る考案(本件では、本願考案に該当)が当該実用新案登録出願の日前の他の実用新案登録出願又は特許出願であつて当該実用新案登録出願後に出願公告又は出願公開がされたものの願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された考案(本件では、引用考案に該当)又は発明と同一であるときは、その考案については、実用新案登録を受けることができない旨を規定しているのであつて、引用考案が新規であることをもつて登録拒絶の要件とはしていないのであるから、原告主張のとおり、引用考案の記載のある先願の実用新案登録出願の日前の出願に係る特許願昭和49年第94621号が存在し(このことは、成立に争いのない甲第4号証により明らかである。)これに引用考案と同一の技術事項が記載されているとしても、これにより、引用考案自体が新規性を喪失することは別として、引用考案が本願考案に対して先願たりえないものになるいわれはない。したがつて、原告の右主張は、採用することができない。

2  原告は、引用考案は、液化石油ガス供給装置の欠陥問題に対する認識がないものであり、本願考案とは解決課題を異にするから、両者は同一とはいえない旨主張するから、検討するに、前記本願考案の要旨に成立に争いのない甲第2号証の1及び3(本願考案の実用新案登録願書、明細書及び図面並びに手続補正書)を総合すれば、本願考案は、昭和51年改正の新気密検定基準による以前の旧気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓などが設けられている液化石油ガス供給装置を対象にし、この装置の欠陥によるガス漏洩災害の防止を解決の課題とし、この課題を解決するため、前記本願考案の要旨のとおりの構成(本願考案の実用新案登録請求の範囲の項の記載と同じ。)を採ることにより、構造簡単、生産容易で経済的に安価なうえ、高圧ガス漏洩を防止する作用効果を奏しうることを認めることができ、他方、成立に争いのない甲第5号証(先願の実用新案登録願書並びに明細書及び図面)によれば、先願(実願昭50―16446号)の実用新案登録願書に最初に添附された明細書の考案の詳細な説明の項及び図面(特に第3図)の記載によると、右明細書及び図面には、本件審決認定のとおりの事項(請求の原因3中1ないし4)が記載され、また、出流れ閉止弁の使用態様が図示されていることが認められ、これらの記載内容等に前掲甲第5号証を総合すると、先願の右明細書及び図面には、本件審決が引用考案と認定したとおり、「高圧ガスを圧縮あるいは圧縮液化して充填しているボンベ、使用圧力にガスを減圧調整する減圧弁等、ゴムホース及びガス使用機器とからなる液化ガス供給装置において、減圧弁等とガスの使用機器との間のガス導管にガス圧力の異常上昇を感知してガス導管中のガスの流れを閉塞する自動遮断弁を設けた装置」の考案が開示されており、右の示された構成により、比較的小さく簡単な装置であるにかかわらず、実用的で安全にガス漏洩事故を防止する作用効果を奏しうることを認めることができる。そして、叙上認定の事実に徴すれば、本願考案と引用考案とは、共に、液化石油ガスの供給使用時における安全装置に関するものであり、ガス漏洩事故の防止を課題としている点では、解決の課題を共通にしているものとみるを相当とし、また、「液化ガス供給装置において、ガスボンベとガス使用機器との間のガス導管中を流れるガスの圧力の異常上昇を感知して、その流れを閉塞するガス流自動遮断装置をガス導管に設ける」点において、その構成を同一にし、同等の作用効果を奏するものと認めるのが相当である。もつとも、前段認定の事実によると、本願考案が、栓類を「安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準を基に製造されたガス栓、元栓、器具栓など」に限定し、したがつて、このような栓類の設けられたガス供給装置に生ずる欠陥を解決の課題としていることを明記しているのに対し、引用考案には、栓類についてこのような限定がない点で相違することが認められ、また、引用考案の記載された先願の実用新案登録願書に添付された明細書にガス供給装置の欠陥問題についての記載がないことは、被告の認めるところであるが、これらの点は後記認定のとおり叙上認定を妨げる理由とするに足りず、したがつて、原告の叙上主張は、採用することができない。

原告は、引用考案には、本願考案におけるような安全弁が付いていない旨主張するが、引用考案には、前認定のとおり、使用圧力にガスを減圧調整する減圧弁が備えられており、成立に争いのない乙第1号証1ないし3によれば、「減圧弁」は、一般に「圧力調整弁」ともいわれ、この中には、安全弁の機能を備えた「リリーフタイプ」と呼ばれるものがあることは当業者間における技術常識であることが認められるので、引用考案の「減圧弁」には「安全弁を備えた調整器」を含むものとみることができ、したがつて、原告のこの点の主張は、採用の限りでない。

次に、原告は、引用考案においてはガス栓の気密検定基準が考慮されていない旨主張する。しかし、前掲甲第5号証によると、引用考案中の使用機器に付属する栓類がいかなる気密検定基準を基に製造されたものかについては特に明記されていないが、その当時の一般的な市販品、すなわち、先願の実用新案登録出願当時(昭和50年2月)又はそれ以前に施行されていた気密検定基準に基づいて製造されたものと認めるのを相当とするところ、本願考案にいう「安全弁の作動ガス圧より低い気密検定基準」が昭和50年以前に施行されていた旧気密検定基準を指するのであることは前認定のとおりであるから、結局、引用考案におけるガス栓類は、本願考案と同じ旧気密検定基準を基に製造されたものとみることができ、本願考案中のガス栓類と格別の差異はないということができる。それゆえ、引用考案の記載された先願の実用新案登録願書に添附の明細書にガス供給装置の欠陥問題についての記載がなくても、引用考案が解決の課題としたガス供給装置のガス漏洩事故の防止は、本願考案の解決課題と実質的に同一であるというべきである。したがつて、原告の右主張は、採用するに由ない。

更に、原告は、本願考案と引用考案とはその奏する作用効果を異にする旨主張するが、両者の奏する作用効果に格別の相違はなく(なお、本願考案では、調整器弁から低圧側に限定量以上のガスが低圧側に漏洩しても、安全弁から大気中に放散されるため、低圧側のガス圧が安全弁の作動ガス圧より高くなることがなく、ガス供給装置を破損するおそれがないのみか、手動の高圧ガス抜き弁を必要としないとの原告主張の作用効果は、その主張から明らかなとおり安全弁を備えた調整器の作用効果であつて、本願考案による作用効果というべきものではなく、引用考案の減圧弁が安全弁を備えた調整器を含むこと前認定のとおりである以上、引用考案においても、この点では、同様の作用効果を奏することは明白である。)、同等とみるべきことは前説示のとおりであるから、原告の右主張も採用することができない。

(むすび)

3 以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第89条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(武居二郎 杉山伸顕 川島貴志郎)

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